マリーの中の何処か冷静な自分がゆっくりと周りの情景を見ていた。


「さぁ、私と共に来るのだ…」


青年はマリーを見下ろし口元に弧を描くと彼女の細い肩に腕を回した。


不意に後ろから泣いている様な掠れた声が聞こえた。


「…待て…」


青年は眉間に皺を寄せ振り返る。


マリーも驚いた様に振り返った。


「姉上を…、姉上を何処に連れてくつもりだ!!」


そこにはソファで怯えていたはずの少年が恐怖に負けまいと腰の短剣を青年に向けていた。