フッと鼻で笑うような声にマリーは顔を上げた。


目の前には肩にかかる程の黒く艶やかな髪、マリーのように澄みきった青空を思わせるような瞳、通った鼻筋に形の良い唇を持った青年が、マリーを見下ろす様に立っていた。


マリーは侍女をそっと脇に寝かすと立ち上がって、その眉目秀麗な青年をキッと睨みつけた。


「貴方の目的は私だけのはずです。他の者に危害を与えないで下さいませ」


「邪魔な物は片付ける。当然の行いであろう?」


青年は何の悪びれも無く平然と言ってのけた。


マリーは怒りで全身が粟立ったが、これ以上周りに危害が起きないように大人しく言う事を聞く事にした。


父は目に涙を溜めマリーを見ている。


近くでは城の兵士達がどおしたものかとオロオロしていた。