俺は新撰組に帰るなり土方さんの部屋へ入った。言いたい事は山程あったが、その中でも言いたかった一言を主張しながら。



「俺にも手伝わせてください」


「何の話だ」


「鍛冶屋に聞きました。遠征までして書類仕事ばかりしてるって。何で俺には手伝わせてくれないんです?」



 土方さんは振り返って正座すると、俺に座れと命じた。俺は刀を外して勢い良く座ると少しだけ前のめり気味に土方さんを見る。



「そりゃ、俺はまだまだ土方さんにゃ勝てませんよ。力ではね。書類仕事なら教えて貰えれば俺にだって出来るはずです」


「教えなくても出来るだろ」


「じゃあ何で!」



 土方さんは眉間にシワを寄せて俺の刀をひっつかむと、そのまま俺に投げつけた。何でそう言う事になるんだ、と。俺はその刀を抱き締めたまま静止した。

 土方さんは舌打ちをすると俺を見る。



「何で後数分が待てないんだお前は」


「はあ?」


「俺が近藤さんと協力してお前を一番隊にやったのは、お前が毎日欠かさず稽古をやっていた事をちゃんと知っているからだ」


「だから、一体なにを」


「仕事だ」



 その言葉で俺は少しだけ鳥肌が立った。



「倒幕を企む輩が島原にいるとの情報が入っていた。ここ数日はその動向を掴む為に俺たちは動いていたんだ。お前を呼ばなかったのは、お前に力が足りないからじゃない」


「……え、じゃあ、俺の歳が足りないから? 島原に入れないから呼ばれなかったんですか?」


「俺は何ともないと言ったが、近藤さんがあの性格だからな。だがお前が鍛冶屋に行った後、その浪士たちが島原を出て花簪と言う旅館に移動したと言う情報が入った」


「じゃあ」


「お前は一番隊を率いて前からは入れ。俺は二番を率いて後ろで待機している」



 連れていってもらえる。



「あの、土方さん」


「準備しろ」


「ーーっはい!」



 嬉しさのあまり俺は畳の上で足を滑らせた。土方さんが吹き出すのが聞こえる。だがそんな事はどうでもよかった。俺は刀を握りしめたまま特に用意なんてものはないのに、誠の法被を引っ張り出して来てやった。