「お前を泣かせたかった訳じゃねぇのにな」

「笑って欲しい。」

一瞬、目の前に居た川瀬が消え視界が塞がった。体を包む温もりが伝わってきて、担任の胸に顔を埋めているのだと分かった。


『っなに…がっ……した…ヒック…いんだよ。』

担任に対してこの疑問を浮かべた回数は数知れず。こんな状況でようやく本人に聞くことができた。

「なんとなく。」

あっさりとした返事が返ってきたが、優しい声で頭の上から聞こえてきた。

自分もされるがままにただ担任のシャツに涙を吸い取られていた。