「ごめんなさい!

あたし……、好きな人がいるんです……」



あたしは人目も憚らず、大きな声で謝罪した。


「それは、雄輝ちゃんの保育園の、彼だね」


そんなあたしの様子を見ても、坂本弁護士は少しも動揺を見せなかった。


我が家に来る度、雄輝に聞かされてきた彼の話。

『つとむせんせいが、パパだったらいいのになぁ』

雄輝の大好きな先生のこと。

勘のいい彼のこと、只の子供の憧れ発言とは思わなかったのだろう。

雄輝が「つとむせんせい」を連発する度、過敏に反応するあたしを見て勘付いたに違いない。


「確かに、彼のひたむきさは、太一に何処か似ているかもしれないが……

いかんせん、彼はまだ若い。

君がいくら彼を好きでも、報われない愛だとは思わないのかい?」


「な、なんでそこまで……」


「見くびってもらっちゃ困るな、僕は弁護士だよ」


彼は何処までも冷静だった。