それでも……
あたしは、彼を偽ることはできても、自分を偽ることはできない。
「あたし……
正直言って、どうご返事したら良いのか判りません。
坂本さんのお気持ちは、とっても嬉しいんです。
でも……
あなたに抱く、あたしの気持ちは恋とは違う。
あたしが太一に対しで抱いていた、恋心とは違うと思います」
それでも彼は引き下がらなかった。
「美樹さん、人生には打算もあって良いんじゃないかな?
僕は君の今までの人生について、ほぼ全てを知っている。
雄太くんの父親である太一とは親友だったし、雄輝ちゃんの父親とも面識がある。
僕には、君達家族に、贅沢とまでは言わないけれど最低限の生活を保障するだけの収入もある。
なにより、僕が君を必要としている」
確かに、彼の申し出に頷きさえすれば、あたしのこれからの生活は楽になる。
子供達の将来にも、きっと良い影響を与えるだろう。
彼のことが嫌いな訳じゃない。
ただ……
あたしの頭に浮かんだのは、あの弾けるような笑顔。
この気持ちを、無視する訳にはいかなかった。