「太一も僕も、地位とか名誉とかが、人の幸せにとって何の役にも立たないものだと身体で理解していました。
本当の幸せは、飾らない愛の中にあるってね。
太一が君を死ぬまで大切に思っていた気持ちが、僕にはよく分かる。
そんな僕が、君の傍にいて、好きにならない筈がないでしょ」
「えっ?」
彼の優しい瞳は、じっとあたしに注がれていて。
「愛していますよ、もうずっと前から。
君の瞳がたとえ僕を見ていなくても、僕は太一に代わって君を守ると誓ったから。
本当は口にするつもりはありませんでした。
でも、最近の危うげな君を見ていると……
美樹さん、もうここらで気を抜いたらどうですか?
君も、君の子供達も、全部ひっくるめて僕が面倒みます。
僕と結婚する気はありませんか?」
「はぁ?」
何がなんだか、わからなかった。