出てきた料理は、それはもう文句のつけようが無い位に、美味しかった。
坂本弁護士は、そつ無く、あたしにワインを勧め、あたしはいつの間にかほろ酔い気分で。
「まさか、坂本さんが、あたしとデートしたかった、なんて考えても見ませんでしたよ」
なんて、つい、触れてはならない聖域に足を踏み入れてしまったのだ。
彼がその瞬間を見逃す筈がなかった。
「美樹さん、僕の父がヤクザ崩れで獄中死した、って話は以前しましたよね。
その後、僕を引き取って育ててくれたのが、父の実姉で。
彼女の夫は外交官だったんです。
彼は僕の義理の伯父にあたる訳ですが、彼にはとても良くして貰いました。
何不自由ない暮らしと、最高の教育を与えて貰いました。
今でも、感謝しています。
元々、父の家は、太一君の家のように田舎の名家で、その家族は地位と名誉を得ることが生き甲斐だった。
その中にあって、僕の父だけが異端児だったってことです。
そういう意味でも、僕と太一君は気が合った。
というより、お互いをより理解し合えた」
あたしは、一瞬、太一の母親を思い出して身震いした。
けど、そんなあたしを見て、坂本弁護士はクスリと優しい目をして笑ったんだ。