ざわついた会場。

独特の熱気。

周りの女の子達は時計を気にしたり、楽しそうに話をしている。

私はひとり。
いわゆる『お一人様』というやつだ。

別にはずかしくない。

周りなんて私に興味はないもの。

興味があるのは、『彼』のことだけ。

・・・。

ほどなくして、会場が闇に包まれ、
彼のアコギの音が会場に響き渡った。

そして、だれしもをひきつける澄んだ声。

私は、今まですべてに興味がなかった。

音楽にも。

人にも・・・。

でも、『カレ』は、はじめて自分から気になった人だった。

ちょっとでも気がついてほしくて、背伸びをしてみたけど…
人並みより小さい私にはすぐに無理だってわかったから、やめた。

でも、やめた瞬間に『カレ』との距離を自分で認めてしまったような気がして
胸が締め付けられた。


これが世にいう『春』・・・か?

もし、そうなら、この『春』は叶うことなんてないんだ。


・・・きっと。