「あのォ・・・
手離してもらえませんか?」

「嫌です・・・・」

また 変な人に捕まった・・・

もう 面倒臭い・・・

「それで、何か用ですか?」

「あの、私に
髪任せて下さい!」

「よく分からないんですが・・
もしかして
髪切るって事ですか?」

「はい!切らせて下さい!」

「美容師さんなんですか?」

「はい、あそこの美容室で働いてるんですけど
午後から 試験があって・・・」

指差した方向を見ると
ビルの2階に 結構大きな美容室がある。

「えっと・・・それで
私 何かするんでしょうか?」

「あ、その 午後から 
あそこで 試験というか見極めというか・・・
それに合格すると
希望の支店に行けるんです。
でも、頼んでたカットモデルの子が
やっぱ切りたくないって言い始めて・・・
お願いします!」

歩道の真ん中で
こんな頭下げられても
どうしたらいいか・・・

「どのくらい切るんですか・・?」

「それはもう、希望に応じます!
お願いします・・・」

そんな必死に頼まれたら
私には断る勇気なんてない。

「いいですよ。
でも、胸くらいまでは
残して下さいね?」

「そんなに切っていいんですか!?
ありがとうございます!」

もうすぐ 腰下到着だったんだけどな・・・

でも、この人の言うとおり
毛先が痛んでたし・・・

こういう事でもないと
切るきっかけないし
ちょうどいいのかもしれない。