それから 数日が過ぎた。

携帯が鳴る度に
期待と不安が混ざり合い
輝樹じゃないと分かると
ホッとしたような
ガッカリしたような
よく分からない心情になる。


「春菜、大丈夫?」

美香が 毎日 
顔を合わせると
決まったように
そう心配そうに聞いてくる。

その度に 

「大丈夫に決まってんじゃん~
こんな事で 落ち込んでられないでしょー」

なんて 強がりを言ってしまうけれど

私だけが つらいんじゃない。
明るく振舞ってる人の中にも
私以上に しんどい人もいるわけだし
みんな、それぞれ大なり小なり
悩みを抱えて生きてるのは事実。


実際、私の心配をしてる美香も
結局、翔くんと別れてしまった。

浮気されたという事が
主な原因だけれど
美香自身も 翔くんの事が
本当に好きなのか分からなくなったという
根本的な問題に直面してしまい
別れる事を選んだみたいだ。

いつものように
美香と2人で学校から帰ってる時、
見慣れた車が横に停まった。

「そこの女子高生ー
俺の車で遊び行かない~?」

「ぷっ・・・あははは
ケンちゃん みんな見てんじゃん。
こんな所で そんな変な事言ってたら
通報されるよー?
あははは」

「ほら、早く乗って。
通報されちゃ シャレにならないじゃん」

急かされる様に
車に乗り込むと

「ちわー、おひさぁ」

秀忠くんの姿が
助手席にあった。