輝樹は 少し笑うように

「ごめんな・・?」

そう言いながら
大きな手で
私の頭を撫でると
ため息をつくように

「行くか、送って行く。」

そう一言言うと
机の上の鍵を握りしめた。



本当は このまま
帰りたくないけれど、
送って行くと言われると
帰るしかない・・・

離れたくない気持ちを
押し殺し
車に乗り込んだ。

車の中では終始無言のまま・・・

手も繋がず、
別れ際のキスもなく、

車を降り
走り去る車の
テールレンズを見ながら
輝樹の

『ごめんな』

その言葉が
頭の中を駆け巡る・・・


もしも、私が
あの時、
言葉を出さなければ
こんな不安にならなかったのかもしれない。

恥ずかしくても・・・・

輝樹に身を任せておけば・・・

そんな後悔が
押し寄せてくる。