優奈はなんとフォローしていいか、言葉に詰まった。俊哉の言っていることは本当すぎる。他のことはそつなくこなし、洗濯、掃除なんでもござれの彼が、料理だけはいくらやってもうまくならない。けれどもそれは優奈も似たり寄ったりで、さっきのサラダも、サラダだからうまく出来たわけで、煮物だのなんだのになるとお手上げの状態だから、これは血筋がなせる業かもしれないが。
 それでも俊哉を落ち込ませたままにしておけない。
「俊哉お兄ちゃん。そんな気を落とさないで。人間誰しも苦手なものはあるよ。優奈だって、えーっと・・・・・・そう。英語が苦手だもん」
 優奈は付け足のように言って、俊哉を浮上させようとしたが、「英語」と聞くと、兄は過敏に反応した。
「そうだ、優奈!英語!!」
「え?英語がどうかしたの?」
「おまえに言わなかったけど、今日俺、日高先生に呼ばれてさ」
 優奈は顔をしかめた。嫌な予感がする。
「言われたよ。『一学期は英語を習い始めたばかりだから、様子を見ていたけど、二学期が始まってから、どんどん点数が悪くなっていってる』」