「朱里!
 ママ、旅行に行きたいんだけど
 いいかしら?」

ある日、ママが突然こう言った。

「はぁ?
 ちょっと待ってよ。
 あたし、家事ができないの
 知ってるでしょ?」

「もちろん知ってるわぁ。
 この機会を利用して、家事できるように
 なっちゃいなさい」

そういうと、ママはスーツケースを持ってきた。

そして時計を見て呟く。

「そろそろね」

――ピンポーン‥

インターホンの音が家中に響く。