物思いにふける中、

気配を感じ

公園へと通じる

並木道に目をやった。



そこには花束を抱えた

彼女の姿があった。



後ろには、

車椅子を押す

彼女の父。


その隣には

彼女の母。



３人は、

遠目から見ても

とても幸せそうで、

暖かいオーラに

包まれていた。



僕は立ち上がり、

３人の方へ

向かおうとした。



しかし、

一歩足を前にして、

歩みを止めた。



３人で歩むこの道を、

この時間を、

邪魔したくない…


そんな思いが

込み上げた。



彼女の両親は、

明日には転勤で

この地を離れる…



もちろん永遠の別れに

なるわけではない。



しかし、

この道を終えると、

しばしの別れになる。


そして、

３人だけの

人生という道も

終わる。



今僕にできること…

それは見守ること

だけだ…



近づくにつれ

表情もはっきりと

見えてきた。



笑顔…


しかし、

その笑顔はまるで、

残り少ない時間を

惜しむ思いを隠す、

仮面のようにも

見えた…



姫乃は僕に手を振り、

僕も振り返した。



会釈する彼女の両親に、

僕は深く頭を下げた。



そして…


無情な時間が過ぎる

のは早く、

３人は僕の前で、

歩みを止めた。