返事を待つ視線が、

一点に注がれる中、

重たい口を開いた。



「任せて下さい。
姫乃さんの想いも、
お父様の想いも、
しっかり守って
みせます」



すると、

彼女の父は

いっそう強い眼差しで、

聞いてきた。



「恋愛と違って、
結婚となると
想いだけではいけない
事もある。
それもちゃんとわかって
いるかな?」



確かに、

ただ好きだという

想いだけでは、

難しいこともあるだろう。



しかし…



「はい…
それはわかっています。
しかし、
その想いが全ての
始まりであり、
今ある確かなモノです」



僕は、

自分の正直な想いを、

告げた。



例え甘いと言われようと、

今の2人には

それしかない。



「好きだけじゃ駄目なの?
っか…」



彼女の父はそう言い

微笑んだ。



「えっ?…」



僕は思わず

聞き返してしまった。



「いや…
姫乃に言われたんだ。
好きだけじゃダメなのか…
ってね」



「えっ…姫乃さんが?」



僕はその言葉に、

少し驚いた。



「ええ…
他にも色々言われたよ。
凄い目をしてね」



笑いながら話す

その表情には、

嬉しさと寂しさが

入り混じっていた。