オーナーの姿に、ハッと我に返りジンジンとする右手を左手でギュッと握り締めた……………。

「何があったんじゃ?」
「……………………上等だよ!あーやだやだ、彼女でもねぇくせに!…言っとくけど…あんた、使用人だってこと忘れてない?………くそっ」
「…コレ翼!」

翼も、ア然としていたらしくハッとした後…怒鳴りるように言い捨て店を出て行った。私は大きい衝撃を充分に、感じさせられていた…オーナーは、理由を聞いたが私は頭を下げるしかないと翼に釘を刺されたも同然だった。(ついつい、みんなに甘えて忘れてた…のは事実だわ。私、何様?)


「オーナー、翼君に謝っておいて下さい。でも、言った言葉は絶対に撤回するつもりはないと」
「蛍ちゃん、喧嘩は昔から‘喧嘩両成敗’だから……蛍ちゃんだけが悪くない…翼も今頃は…」
「…お疲れ様でした。」


オーナーが、どう言っても雇い主は翼の家族で…変わらない事実なので帰る時も頭をキッチリと下げると店を後にした。
清掃バイトは、凄く助かった…なにせ無言の上にマスクで表情も隠れるからだ。一人仕事でもありこの日は、さっきの出来事で頭が一杯でも困る事はなかった。

「ふーん、良い身分だよな…何も知らないなんて嘘かよ?…こんな時間まで遊んででたんだな…11時半って寄り道じゃないじゃん」
「………………翼…君」

アパートに、着くと階段に翼がモロに不機嫌そうに座っていた…………が 私に気付いたらしく厭味を言った。

「…ごめんなさい…」

私が先に、“君”付けしたのが頭にきたらしく怒りに表情は変わった…。 仕方なく私は、すれ違うように階段に足をかけながら『叩いて、ゴメン』とつぶやいて2階に急ぎ部屋の鍵を開けた。