「…………翼?」
「何無断で、居なくなってんだ!?…お陰で俺まで…引っ張りだされたんだぞ!……あほ蛍…心配かけんな」
「………心配…した?」
ギュッと抱き込まれている姿は、流石に目立つ…けど今は何故だか気にもならずに状況判断をするのが精一杯だった。

「…爺さんが、スゲー心配してて…ムカつくけどアイツ(藤堂)が携帯のGPS…って蛍!途中で電源切っただろ!?…見失って大変だったから…腹減った…連絡してあるから、付き合えよなっ!」

散々文句言いながらも、手を繋ぐと何だか暖かい気持ちにはなったが……それでも、目の前の壁が無くなることはなく…翼との間にも……………。


食事をした後に、店に戻ったら凄く怒られた。…オーナーが、これ程に怒られたのは生まれて初めてだが少しも嫌な気にもならなかった。逆に、嬉しくなった…本気で接してくれる人など居なくて母さんすら遠慮気味だったからだ。

「隆一君にも、きちんと謝らないとな。どんな理由にしろ心配かけているんだからね……」
「はい…ごめんなさい」 「………社会に、一人でて今が一番色々と出てくる時だ。翼は、どうやら蛍ちゃんに好意を持っているようだから…何でもいえば良い…若いんだケンカしたって普通なんだよ?もっと、自分を出しても良い」
「…爺さん!!」

最後の言葉に、翼は怒ったがオーナーの言葉はどうあれ迷惑かけたのは事実で謝ると真っ赤になって顔を背けてしまっていたけど怒ってはないと判り私は微笑んだ。