「おはよう…いつもの」


働き出して数日…私は、少しずつだが仕事にも慣れ始めて常連さんとも上手くコミュニケーションをとれるようにまでなっていた。


この店は、70年代のままのオールドカフェ(つまりレコードでジャズを聴くかなり古い雰囲気)お客さんは各テーブルにあるリクエスト用紙に番号を書くと私がその番号の曲をかける…といった感じだから手順さえ覚えれば簡単な仕事といえる。
お客さんも80%が常連さん…でも最近になって 新しく来店するようになったお客さんがいる。

一見すると年配の常連さんが多い中、歳は30代半ば位…身なりもキチンとして良い仕立てのスーツを着られる訳でもなく、ごく自然に着こなし本当に“格好良い大人の男“って感じだ。何の知識のない私が判るほどだ…彼は、最初どうやら間違いで入って来たらしいが…その後、毎日同じ時間に来てリクエストする訳でもなくブラックコーヒーに生クリームを乗せる“ウィンナーコーヒー“とタバコを一本吸って帰って行く…名前すら判らないが私の内で印象的に残っていた。
(お店を、気に入ってくれたのかな?…凄く育ちの良さそうな感じ…また明日…来るかな?)見送る度に、そんな風に思い始めている自分がいた。

早く乙女的に言えば“白馬の王子様“…?うーむ、年齢的に男爵?…コレも違う気が…とにかく、その範疇の人という事(苦笑)!私は、一人納得しながら後片付けをした。