「あの…話なら中で…」
「はぁ……駄目だよ蛍ちゃんは、女の子だろう?…車で少し付き合ってくれるかい?」


中で話すつもりだったが…結局は、荷物を置いてから車へと移動することになり渋々だが助手席に乗り込んだ。藤堂さんは、私にシートベルトをつけさせると車を発進させた…それもごく自然にだ!!そのせいで私は文句を言うタイミングを逃してしまったのだ…(えっえっ?話すつもりだったんじゃないの ー??何ナチュラルにドライブしちゃってんのー私!)内心の叫びとは裏腹に、お互い話すことなく私は、きっかけすら見つけられずに走っている間ずっとおとなしく車窓のネオンを見ていた。

どのくらい走ったのだろう…辺りは、街頭も少なくどことなく波音がするように思い藤堂さんを見るとパワーウインドウを下げてくれた。

「……潮風?……海?えっと…えぇ!!!」
「蛍ちゃんは、海は嫌い?」
「う、ううん…私…海来た事ないの…ハハハ、本当に潮の匂いの風なんだぁ~暗いけど街頭の光がキラキラ光ってる!」

実は、一度も本当の本物の海を見たことが無かった。…遠足は勿論、修学旅行もお金がかかると仮病を使って行っていないからだ(後から国からの援助があったことを知ってショックを受けたよな…あの時は。)私は、つい今の状況など忘れて子供のようにはしゃいでしまっていた…もし藤堂さんが、ツッコミを入れてくれたら恥を晒すことは無かっただろうと後々…後悔することに今現在は全く気づいてなかった。