カラン~コロン~……


店の扉が開くと、カウンター内に鐘の音が鳴り客の来店を知らせる。他の客が音楽を楽しんでいるからだ…。

カウンター内で洗いモノをしていた私は、ふと時計をみて眉を寄せた…彼の来る時間だから。いつもなら、慌てて出て行くのだが今日は昨日の事もあったから聞こえないフリをした…カウンターにはマスターがいて困る事などない(夕べは、悔しくて眠れなかったんだからね!!彼に罪はない…それでも蔑まれるのは嫌だ!彼も同罪だわ…!!)

わざとガチャガチャ洗い物をしているとマスターから呼ばれてしまい仕方なく店内へと出ていった

「蛍ちゃん、悪いがリクエスト頼むよ」
「…はーい、今…」

最近は、少しだけど話をしたりリクエストを頼む事も増えていたから驚くようなこともなかったが…あえて視線を避けるようにレコードの並ぶボックスに足早に向かった。

「…へぇ、いつ見ても手際が良いんだね…」
「はぁ…仕事だから…」
「…蛍ちゃんは、16歳だって?マスターから看板娘って聞いたよ。一日中仕事して偉いな」

レコード盤の処理をしていると背後から覗き込むようにして話しかけられ驚いたが…どこか探るというか含みのある言い方に手を止めて振り返った…が、フワリとコロン(多分だけど…)の香りがし思わずドキドキとしてしまい慌てて前を見て手を動かした(バカ!何ドキドキしてる訳?相手は何か探っているのよ!)

私は内心動揺しながらも
あえて冷静に何も答えずにレコード針を落とすと彼はそれ以上何も言わずカウンターに戻って行った。いつもは短時間に思えるのに何故か今日は、一分一秒が凄く長く微妙な空気が流れていた。