桜が開花まじかの晴れた日…ボロボロの2Dkのアパートを見上げ大きく深呼吸をし、今日から一人暮らしを始める二階の角部屋へと足元軽く向かった。藤木 蛍(ふじき けい)16歳…つい昨日まで、六畳に五人で生活を送っていた私には こんなボロアパートでも豪邸のに思えたのだ。


「何を言っているの?貴女なら就学金のある…」
「…そうですね…でも生活費は無いんです。孤児院だって苦しい事位知っています!だったら私一人でも出て働く……当然の事ですよね?」
「だからって、貴女は16歳なの!法律上は、18歳までは…」
(あ~もう!本人が、大丈夫だと言ってるのに…でも絶対ここで引き下がっちゃダメ!)


これは、今から二ヶ月程前の身元保証人の坂本 恭子(さかもと きょうこ)さんや学校サイドとのやり取りだ…………そう私は、赤ん坊の時に捨てられ孤児院の教会で育ったのだ…母さん(院長先生:高橋 律子たかはしりつこ)は大好きだけど今のご時世で子供達の世話や食費は、例え国からの援助があっても大変で…内職をしているのを見て育ったからこそ母さんが恥をかかない程度に勉強も家事もできるだけ頑張ったのだ。そしてやっと、働ける年齢になった…これは、働いてお母さんや妹・弟達に楽させる…当たり前の事だと私は思ったのだが大反対で余計に意地になって揉めたのだ。結局お母さんの知人のカフェで仕事をして知人の管理するアパートに住むことで 納得させたのだった。

そして今日…中学の卒業式の後 お母さん達に見送られ隣町へとやってきた。特別に、荷物もなく身の回りのモノだけだがオーナーの竹内 忠(たけうちただし)さんに生活最低限は揃えて貰ったので困ることは何もなかったし……例え何もなくても寝る場所さえあれば良いので感謝して使用することにしたのだ。
こうして私の一人暮らし生活はスタートした。