「ほんと昔から、お母さん匠のことお気に入りなんだもん!」
部屋に入ってブレザーを脱ぎながら呟く。
「昔からお気に入りは、はるの方じゃないの?」
よゆーの笑みでそう言う。
「…なっ」
そんなん…図星だけどさ。
「もち俺もだけどね〜♪」
後ろからあたしを抱きかかえるように座る匠。
ふわふわした茶色い髪が耳に当たるたびくすぐったい。
…優しいのか意地悪なのか、どっちかにしてほしいよホント、
「あー、飲み物持ってくるね?
なにがいーい?」
「ん〜…」
「「オレンジ」」
「えっ?」
わざと重ねた声。
戸惑う匠が可愛い。
「彼氏の好みくらいわかるよ?
じゃ、持ってくるね♪」