今の俺には見たくない文字だった。
見る度、イラつきが増す。
なんでこんな時に?
俺は眉間に皺を寄せて、携帯を睨みつけた。

でも梨花という文字は消えることなく、何度も何度も映し出される。

雨の音とともに流れる陽気な音楽が、余計俺に怒りを加える。


『怜、電話鳴ってんじゃん。出ねぇの?』


すると竜也が俺に気づかせるように、傘で俺の傘を当ててきた。


『あ、うん』


俺は苦笑いをして、竜也たちから少し離れ、しつこく電話してくる梨花の電話に出ることにした。

『なに?』


『やっと出てくれた!!今から会えない?会いたいよ…』


電話越しから聞こえる梨花の声が、とても弱々しく、そして甘えている声。

そんなに俺が必要なの?

俺は髪の毛を掻きあげて、空を見上げた。
そして『ん~』と声を絞って、梨花と会うかどうか考えていた。