友達には、幸せになってもらいたい。
俺が不幸せな分、友達には幸せになってもらいたい。

だから、俺は自分に芽生えていた本当の気持ちを、無理矢理押し殺した。
でも、一度芽生えた気持ちは、そんな簡単になくなったりしないんだ。
俺はまだ何も気づいてなかった。


『どう?俺のあやちゃん』


『…いいんじゃないの?うん、いい子そうだし』


俺は浮かない顔をして、浮かれている竜也の質問にこう答えた。
綾音は優しく微笑み、こちらを見ている。


綾音…頼むから、
俺をそんな瞳で見ないで。
綾音の瞳に吸い込まれてしまいそうだ。
綾音を奪いたくなってしまう、だから、お願い…やめて─…


すると、静かな街に、陽気な音楽が加わる。
その正体は、俺のポケットに眠っていた携帯だった。


『…梨花…』


俺の大好きな歌手の曲が何度も何度も流れる。

待ち受けには、梨花という文字だけ…