自分の過去を誰にも言ったことがない。
言う必要なんてないと思っていたから。
でも、キミは特別なんだ。


俺は部屋の電気をつけて、冷蔵庫から水を取り出し、グラスに入れて飲み干した。



そしてカッターシャツを脱ぎ、洗濯機の中に放り込む。


風呂場の鏡の前に立ち、自分を見つめた。
首筋に赤い痕がうっすらと残っている。


先生が勝手につけたんだな。



俺はその痕を手で触った。
そして後悔をする。

また、罪が増えてしまった、と。



すると、カバンの中に入っていた携帯電話が鳴り出した。
俺は風呂場から一体離れ、もう一度リビングに戻る。


携帯を取り出すと、待ち受け画面に映し出された文字は、女の名前だった。


『はい?』



『あっ怜?今から暇?遊ぼーよ!』



テンションが高いこの声の犯人は、俺の彼女の一人、加奈《かな》。
同じマンションに住んでいる。