綾音の匂いが溢れる部屋の中で、俺は綾音を抱いていた。

もう止まらない。
そんなこと分かっていた。
眠る綾音の頬にキスをした時から。
もう、歯止めがきかなくなっていた。


綾音の小さな体を、俺の体で包み込む。
そして耳元で囁くんだ。綾音に、『大丈夫?』って。


『綾音…』


俺の声、聞こえるだろうか?
聞こえたよね。
だって小さく頷いてくれたから。


綾音の頭を優しく何度も撫でてあげた。
こんなことしか出来ないけれど、それで綾音が落ち着くのなら、俺は何度だって抱きしめて、何度だって、頭を撫でてあげる。


綾音は涙をいっぱいためた瞳で、俺を見た。
瞳に映る自分の姿が、ゆらゆらと揺れている。


『なんで…そんなに悲しいの?』


そっと綾音の頬を触って、綾音に問いかける。


綾音もこの時、俺と同じ気持ちだった…