自分の気持ちが見えているのに、好きな人がこんなにも近くにいるのに、俺は何も出来ない臆病者。
…最悪だよ。
俺はしばらく綾音を見つめて、綾音の寝室からタオルケットを持ってきて、綾音の肩にかけた。
すやすやと眠る綾音の髪の毛に指を通す。
さらっと落ちる黒い艶やかな髪を触るだけで心臓が疼く。
『…好きだよ…』
眠っている綾音に向かって小さな声で素直な気持ちを言う。
当然綾音には聞こえていない。
俺は手をぎゅっと握りしめ、ネクタイを緩めた。
とりあえず風呂に入らなきゃな。
歩きながら着ていた制服を脱ぎ、床に落とす。
カッターシャツは洗濯機の中へ。
裸の俺は風呂場へ。
朝のお風呂は明るすぎであまり好きではない。
俺は疲れきっていた体を洗い流していく。
立ち上る白い煙。
俺の髪の毛から雫が流れ落ちていく。
その雫は排水溝へと流れていく水と一緒に流れていった。