俺の心が悲しそうだから、教室までも悲しそうに見えたのだろうか。


学校を一歩出ると、涼しかった世界から暑い世界へと変わる。
突然の温度差に調節できない俺は、無言のまま歩いていた。


『怜、駅の方行く?』


『うん、そうだね』


俺は梨花に笑顔を見せると、梨花は安心したように、俺へと体を寄せた。
肌から感じる梨花の体温。
ほんのりと熱くて、きっと心もほんのりと熱いのだろう。
梨花の情熱が体越しで感じられる。

じゃあ梨花にも俺の情熱、感じることは出来るのだろうか?

それは無理だろう。
もし俺の心の中を知った暁には、梨花は崩れ落ちていくだろう。


俺たちの足は駅の方へと進んでいく。

近づいていく時計台。
太く黒い針。
茜色の夕日。


時計台で誰かを待つキミの姿…

その子に手を振る彼の姿…


『あ!竜也と綾音ちゃんだ!』



崩れ落ちたのは、俺が先だった。