唯一俺が学校で好きな時は、夕日で茜色に染まった教室だ。
心が落ち着き、癒される気がする。
担任の先生が連絡事項を話してさっさと教室から去って行った。
『じゃ、怜!またな!』
竜也は俺に手を振って、朝と同様、スキップをしながら教室を出て行った。
竜也が教室から出て行ったと同時に、笑顔が溢れている梨花が教室に入ってきた。
『怜ー帰ろ!』
『え、あ…うん』
相変わらず俺の気分は下がりっぱなしで、きっと顔にまで出ていただろう。
『もぉ!元気ないなぁ…』
梨花は頬を膨らませ、俺の腕に自分の腕を絡まらせてきた。
『今日どこいく?』
『どこでもいいよ…』
もう何もかもが嫌になってきた。
俺をこの世界から連れ出してよ。
俺と梨花は肩を並べて、夕日の茜色に染まる教室から姿を消した。
空っぽになった教室が、とても悲しそうだった。