昼食なんて食べたくもなかった。
モノが喉に通らないような気がして。
折角梨花が手作りのお弁当を作ってきてくれたが、俺は『要らない』と酷いことを言ってしまった。


綾音の手作りだったら、勢いよく食べていたかもしれない…


『ほっとけ…』


刻々と近づいてくる時間。
綾音と竜也が会う時間まで、あと数時間だ。
竜也は綾音と会うのが楽しみなのか、朝よりテンションが上がっている。

俺は朝よりテンションが下がる一方だ。


『竜也…』


『ん?なに?』


体を伏せたまま、俺は竜也に言葉を発する。


『…綾音ちゃんが嫌がることすんなよ?』


今の俺が精一杯言える言葉。
竜也は『しないよ』と言って、自分の席に戻って行った。


なにもないで欲しい。

どうかお願い…
綺麗な綾音のまま、
帰ってきますように─…


太陽はゆっくりと沈んでいった…