綾音のキスを奪ったやつは、俺の遥か遠くにいて、未だにスキップをしていた。
俺はそいつを後ろからずっと見つめていた。

なんで…?
なんで俺より先に奪うんだよ…


『…今日は最悪な日になりそうだ…』


ボソッと独り言を呟いて、俺は太陽の下を歩いていく。

信じられない事実を聞いてしまった今日、どんな顔をして綾音に会えばいい?
どうやって接しればいい?

そればかり考える。

昨日、竜也と綾音は唇を合わせて、綾音は今日の朝、普通だった。
まるでキスなんかしてないくらい普通だった。

でも心の中では竜也を想っていたに違いない。

俺が馬鹿みたいだ。
勝手に綾音を好きになって、隣には綾音が当たり前になって…

自惚れるのもいいとこだ。

こんなことを考えていると、自分のアホらしさに笑ってしまった。


綾音への気持ちは、
隠しておこうと決めたのに。