俺は顔をソファーに押し当てて、辛さと苦しさを誤魔化した。


『お願い、早く帰ってきて…』


小さく呟いた願いは、綾音に届いたかな…
ポカポカの陽気が俺の体を刺激する。
それが妙に心地がよくて、綾音の帰りを待っているにも関わらず、俺の瞳は勝手に閉じていった。

たった一言、『好き』がなぜこんなにも言えないのだろう。
俺は夢の中でただひたすら考えていた。


…目が覚めると、あんなにも眩しかった太陽の姿はもうなく、黄色に輝く月へと変わっていた。

リビングは、どこからか香るいい匂いで漂っていた。
起き上がり、キッチンの方に目を移すと、愛しいキミの姿があった。


『綾…音?』


目を擦り、綾音かどうか確認をする。
間違いない、綾音だ。

綾音は俺の方を振り返り、口ぱくで、『おはよう』と言った。


キミの声が聞こえなくても、俺はキミが好きだよ。
ずっと、ずっと。


一日のスタートは、
キミとの『おはよう』で始まる─…