幸せだとこの時感じた。綾音を愛しいと感じた。
綾音に早く会いたいと思ったんだ。


おにぎりを食べ終え、俺は自分の部屋には向かわず、隣の綾音の部屋に足を踏み入れた。

まだ段ボールで綺麗ではない部屋をぐるりと見渡す。

昨日まで殺風景の部屋だったのに、今では綾音のもので溢れている。
白とピンク色の棚や、シンプルな化粧台。
そしてハンガーにかけられている綾音の制服。

綾音の匂いで溢れている部屋で俺はただ酔いしれていた。


『綾…音…』


ぼそっと綾音の名前を呟いても綾音は今ここにはいない。
竜也の隣で笑顔を見せているだろう。

考えたくないけれど、
考えてしまう。

辛いけど、辛いなんて言えない。

俺はゆっくりと綾音の部屋から出て行った。

外は相変わらず眩しくて、目を細めてカーテン越しから太陽を覗く。

太陽はいつも眩しくて、俺はいつか太陽になりたいと思ったりもした。