久しぶりに《親父》と呼んだかもしれない。
本当は呼びたくないけれど、梨花が不思議に思うだろ?
硬直する体…
流れ落ちる汗…
笑顔の、親父…
『怜、いきなり悪いな。どうしてもお前に話があって…』
歩きながら親父は俺に言ってきた。
俺は歯を食いしばって、その場に立ったままだった。
梨花は呆然と立ち尽くすだけ。きっと頭の中を整理しているのだろう。
親父の顔が俺と1メートルほど。
俺はようやく口を開けた。
『…なにしにきたんだよ?』
眉間に皺を寄せ、俺は親父を睨みつけた。
『この前の手紙、読んだか?』
読んだよ。でも燃やしました。悪いですか?
『どうでもいい内容だったから捨てた』
俺は親父の驚いた顔を横目で見て、梨花に伝言を伝えた。
『ごめん、今日はちょっと無理かも。また連絡する』
梨花はすんなりと言うことを聞いてくれた。