俺から漏れた言葉は、俺の思考回路をぐちゃくちゃにした。
なにも、考えられなくなってしまった。
さっきまで感じられなかった梨花の温もりが、今ようやく感じられてきた。
『怜?』
いきなり止まった俺を不思議に思ったのか、梨花が俺を見上げてこう言った。
俺の額から一つの雫が流れ落ちてきた。
暑くなんてないのに、
むしろ寒いのに。
これは暑いから流れる汗ではなく、寒いから流れる汗。冷や汗。
そいつは俺の存在に気がつき、申し訳なさそうに手を上げた。
一歩、後退りをする俺。
一歩、近づくそいつ。
『なんでいるんだよ…』
《会って話がしたい》
突然送られてきた手紙。差出人は俺の大嫌いなあいつ。
そんな遺伝子を授かった俺。
今目の前にいるそいつは、俺の大嫌いなあいつ。
俺に遺伝子を残したあいつ。
『……親父……』