人の感情は自分にしか分からなくて、秘密にすることなどないのに、
伝えたくないことなどある。

俺もそうだ。
でも綾音もそうだった。キミは何を思っているの?


映画館の外に出ると、ベンチに竜也と綾音が座って、俺たちを待っていた。


『お待たせー』


梨花の気分は最高潮なのか、明るい声でこう言った。
ちらっと、綾音を見ると、綾音も俺を見ていて…重なり合う視線。
だけど綾音はすぐに視線を逸らした。

まるで俺のことを嫌いなように、素っ気ない態度を見せた。


さっきのことが原因なのか?そうではないのか…
確率は確実にあのことが原因なのだろう。

でも怒る必要などないよな?


『どこいくー?とりあえず飯?』


空を見上げると、映画館に入る前とはがらりと色が変わっており、夕日から月へと変わっていた。

遠くにある駅前の時計台をみると、8時近かった。