帰りたいけれど、
そんなことなんて出来ないよな…
俺は髪の毛を整えてトイレを後にした。
トイレから出ると、梨花がぽつんと一人で立っていた。
『梨花?』
梨花の名前を呼ぶと、梨花は怒った表情を俺に見せた。
明らかに怒っている。
口を《へ》の字にして、俺を見つめる。
…─ヤキモチを妬くのは俺だけじゃないんだ─…
『どうした?』
『怜!!』
梨花は表情を一切変えないで、俺に近づいてきた。
俺は後ずさりする場所もなくて、背中にはひんやりと冷たい黒い壁。
逃げる場所がなくなってしまった。
『な、なに?』
『綾音ちゃんに優しくしすぎ!!』
頬を膨らませ、こう言う梨花。
俺は梨花の目を見ることが出来ず、視線を下に落とした。
『怜、もしかして綾音ちゃんのこと好きなの?!』
好きだよ。
お前よりは遥かに好きだよ。悪い??