『ちょっと…な。だから優しくしてあげてな?』

申し訳なさそうに竜也は言う。
それに理解した梨花は『任せて』と元気よく言った。

綾音の肩を抱く竜也の手が、異常に腹が立ってしまう。
なんでだろう?
俺は今すぐ梨花と繋がれている手を離して、綾音を奪いたいのに…


時計台の針が12をさし、陽気な音楽を奏で始めた。もう17時だった。


『どーしよっか?あやちゃん、映画とかどうかな?』


竜也が綾音に俺が先ほど言った提案を言っている。
綾音はピースをして、頷いた。


その姿に胸がきゅんとなる。
体中が熱を帯び始める。

『じゃ、映画ということで!』


竜也は綾音と肩を並べて、駅の近くにある映画館を目指して歩き出した。

俺と梨花もついてあるいていく。

竜也と楽しそうに携帯で会話する綾音の姿を俺は後ろから見ていた。

梨花の話など聞かずに、ただ見つめていた…