初めてだよ、こんなの。
俺は目をぎゅっと閉じ、視界を真っ暗にした。
感じるのは、先生の温もりだけ。
だけどその温もりは、俺の心まで、温めてはくれない。
『怜くんにまたお願いでもしようかしら』
先生はこう言ってくすっと笑う。
俺は先生を離し、『だめだよ』と断った。
先生、あなたもヒトのものでしょう?
俺ばっかり求めないで、旦那さんに求めなよ。
『もうすぐチャイムなりそうね。そろそろ教室に戻りなさい』
先生は立ち上がり、カーテンを開け始めた。
たちまち保健室は光で溢れ返る。
俺は目を細くして、先生に背を向けた。
『あら、忘れ物よ』
先生は俺の手を引っ張り、頬に軽くキスをした。俺は頬に手を当て先生に向かって微笑む。
『じゃあね、先生』
保健室から出て、俺はトイレへと向かい、頬を確認する。
案の定、先生がつけていたピンク色の口紅が微かについていた。