加奈の肌に何度も愛撫を繰り返す。
その度加奈はいやらしい声を上げる。
俺は体を合わしている最中、その女の名前を呼んだりはしない。
呼んだりなんかしたら、この行為が現実なんだ、と思ってしまうから。
体を合わしているときだけは、夢であって欲しい。
『怜、キスしてよ?』
加奈は俺の顔を手で包み込んで、自分の方に近づけた。
俺は加奈の手を離し、
『だめ』と言って首筋に顔を埋めた。
俺は女たちに体はあげてもキスはあげたことはない。
キスまでしてしまうと、取り返しが出来なくなりそうで。
キスまでしてしまうと、父親のようになってしまいそうで…
加奈は先生と同様、俺を置き去りにして行ってしまった。
俺はソファーから起き上がり、カーテンから覗く月を見つめた。
『また、いけないことをしてしまったな…』