不気味なくらい保健室は真っ暗で、辺りを見渡す。

『怜くん?』


すると奥の方から俺に気づいたのか、俺を呼ぶ声が聞こえた。


『先生?』

この声は先生の声だ。
俺は奥の方へと進む。


『え…』


誰かに腕を引っ張られ、俺の体は左へと倒れていく。
だが誰かに抱きしめられ、倒れずには済んだ。
この肌の柔らかさ、この香水の匂いは…先生…


『先生?』


『おはよ、怜くん』


先生は俺の頭に腕を回し、ぎゅっと俺を抱きしめた。
先生から母性本能が感じられる。

やっぱり人肌は心地がよい。


『びっくりした。いきなり引っ張るんだもん』


『怜くんが可愛かったからよ?』


何度も何度も、先生は俺の頭を撫でる。
まるで猫を可愛がるように。


俺、もうだめだよ。
綾音に、どんな顔をして会えばいいの?

綾音の笑顔を見ると、胸がきゅんっとなるんだ。

またそんな気持ちになるの?
もう………嫌だよ…