ニヤニヤしながら言ってくる。

…にゃろう。完全に調子付いている。

一生仕える主にならともかく、一夏のアルバイトの相手には絶対にしない。

「…そうですね。キス、します」

アタシは両手を伸ばし、お坊ちゃんの頬に触れた。

そしてそのまま素早く、唇に、キスをした。

「っ!?」

動揺が唇から伝わってくる。

キスは三秒ほどで、終わった。

「―コレがアタシからのご褒美です。満足いただけましたか?」

「おっ前っ!?」

見る見るお坊ちゃんの顔が真っ赤に染まっていく。

こういう顔を見ると、まだ中学生なんだなぁと思う。

いつもはこ憎たらしいけれど、まだまだ子供だ。

怒鳴られるかと思いきや、彼は口を噤んだ。