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ちさと side


「――そんな嬉しい顔をして、何かあったの?」


「――っ?!」


背後から男性のテノール声に肩を驚く。 月が高く見えるほど夜も遅い上に、変質者かと勘違いしてしまうところだった。

「そんなに驚かすつもりじゃなかったんだけどなぁ」


「遠川さん……」


「名前、覚えていてくれたんだ。うれしいよ。ちょうどお店から出てきたのが見えたから、声をかけたんだ。帰るところなんだろ?送るよ」

「必要ありません!」