「いきなりどうしたの?」


「貴方だって突然だったじゃない」


まぁいいわと、話を続ける。


「その人は従兄弟で、背が高くて、高原を走ってるような黒馬で爽やかな人なの。成績も優秀で、なんでもすぐこなせちゃいそうなそんな人に私は憧れたの」

「憧、れ?」


窓に私の言葉通りに文字を書き、端から水滴が滴る。


「仲根さんにもやっぱり好きな人いたんだね」

「どういう意味よ。とにかく、好きだったの。でも……叶わなかった」


脇に拳を握り締める。