彼方は、足を止めたんだ。

わたしは、彼方の背中に抱き
ついた。

 「わたし、少しは揺れたよ。
でも、でも彼方の声が聞こえた
気がしたの。わたしの名前を
呼んでくれた気がしたの。
だから、どんなに揺れても、
やっぱりわたしは彼方じゃないと
ダメなんだよ。彼方~。」

わたしは、彼方の背中で泣いたんだ。


 「心和。」

彼方がわたしの名前を呼んで、
そしてわたしを見つめてくれた。

泣きじゃくるわたしをギュッと
抱きしめてくれたんだ。


 「愛してる。」

彼方の口からこぼれおちた愛の
言葉に、わたしはよけいに泣い
てしまったんだ。