「遅かったようだけどね。」

彼方の言葉に心が締め付けられた。

それって、彼方がもうわたしの事
何とも想ってないってこと?


 「彼方?」

 「心和には、もう俺は必要
ないみたいだ。どうして、俺た
ちはこうもすれ違うんだろうな。」

 「何言ってるの?わたしは・・・。」

 「昨日、見てしまったんだ。心和
が、あいつに抱きしめられてる所。」

 「あれは・・・。」

 「俺、何も言えなかったよ。」

 「彼方、ちがうの。あれは・・・。」

 「言い訳はいいよ。俺にそんな資格は
ない。 心和が幸せならそれでいいんだ。」

彼方がわたしに背を見せる。
一歩一歩とわたしから離れていく。

もう見失いたくなかった。

 「彼方、言い訳ぐらいさせてよ。
そんな風にわたしを見捨てないで。
わたしはまだこんなに彼方が好きだよ。」


わたしは、精一杯彼方の背中に叫んだ。