大好きだった父。
大きな手。
大きな背中。
その大きな手で、何度、私を抱っこしてくれただろう。
そして、何度、私を助けてくれただろう。
母に叱られ、玄関の外に出されている私を、

「また怒られたのか。お父さんと一緒に、お家に入ろう」

と。

一番悔やまれることは、そんな大好きだった父と交わした最後の言葉を、覚えていないこと。



母も、大きな手をした、大きな背中をした、大きな心をもった父を、愛していたに違いない。
そんな父が唯一残した宝物に、なぜ、私はなり得なかったのだろうか。



おかあさん…………
あなたにとって、私はどんな存在だったのですか?