「少し痩せた?」
朋子は私のスタイルが良くなった事を認めたくないらしい

「さぁ自分では判らないけど」
あの男の口調を真似ている
知らない訳が無い
毎日体重計の数値を睨み
どんなメニューをこなせばウエストが絞れるのかを検索している

確かに面白い
嫉妬だけでは無いのだろうが
変化した人間に興味を持って話かけてくる
どんな事をしたのかとか
あまり頑張り過ぎるとリバウンドが怖いよと脅したりとか
肯定否定のテンションは様々だが
代わっていない代われない哀れな自分を正当化するために
オマエは何かインチキをしているのだろうと疑いをかける

「今の彼氏とはどうなの」
朋子の表情は真剣そのものだ
あの男と出会う前の私だったならば熱い友情を感じて涙ぐんでいたかもしれない

「男はみんな幼稚だって言うけど本当よね」
友人の望む方向に話題を持って行く
言えば安心する言葉を用意する
結婚だ子育てだみたいな先の話はしない
人間はそんな漠然とした話題には興味を抱かない
興味を持たなければ嘘は機能しない

・・・愉快だ
あの男からの受け売りに染まっている私が実に愉快だ
私がそんな事を考えているとは思いもよらないであろう朋子の表情も愉快だ