「かい・・・」

「え?」



あたしの腕を、
そっと掴んだ奏兄。



「駄目な妹だなんて、
 俺、思ったことないよ」

「え・・・」

「海以上なんて、
 いないと思ってる」



聞いてたの・・・?

寝てるとばっかり
思ってたのに・・・。



「奏兄・・・」

「分かったら部屋戻れ」

「うん」



笑ってたけど、
すごくだるそうだった。

だからあたしは、
奏兄の部屋を出た。



自分の部屋で、
いつの間にか
あたしは眠っていた。



―――・・・いと



遠くから、
誰かが名前を呼ぶ。

・・・お兄の声。



「海翔、お前大丈夫か?」

「え。何・・・?」

「・・・泣いてる」



本当だ。なんで・・・?



「怖い夢でも見た?」

「分かんない・・・」

「・・・そか」



夢は見た。
先輩が出て来たのは、
ちょっとだけ覚えてる。